1989年6月英国BBCスタジオでの録音と、1989年11月ドイツのコニーズスタジオ、
1982年8月米国ニューヨークでの録音を元に一部オーバーダビングして作られた作品。
アストル・ピアソラが試行錯誤の末、モダンタンゴ最高の編成として
編み出された五重奏団。10年間続けた後期五重奏団を解散し、新たに
結成されたのがこの六重奏団である。そこにはバイオリンはいなく
代わりにチェロが、そしてバンドネオンは二人になっている。
自身最高と確信し続けてきた五重奏団を解散させたのには理由があったようだ。
それはこの編成に音楽的限界を感じたというよりも、アストル・ピアソラ自身の
心臓病を配慮したというのが本当のところらしい。つまりバンドネオンを2台
にすることでアストル・ピアソラの負担を軽減しようとしたらしい。
変更があったのは編成に関わるメンバーチェンジだけではなく、その他の
パートにも及んだ。1989年6月のBBCスタジオでの録音では五重奏団時のギター奏者
オラシオ・マルビチーノとコントラバス奏者エクトル・コンソーレがトラック
されているが、1989年11月のコニーズクラブでの演奏に至っては五重奏団時の
メンバーは全て姿を消している。
まずこの六重奏団の核となったのはアストル・ピアソラとダニエル・ビネリの
両バンドネオン奏者、ピアノ奏者のゲラルド・ガンディーニの三人であろう。
このメンバーに関しては両録音を通して固定している。また、演奏においても
前ピアノ奏者パブロ・シーグレルがポピュラーミュージック出身だったのに対し、
現代音楽出身のゲラルド・ガンディーニはクラスターを多用したりして極めて
実験的な音を生み出す結果になっている。
しかし、バイオリンがなくなったことで華やかで鮮やかな音はない。
低音部に重心が置かれた極めてハイデンシティな音だ。
「ブエノスアイレス午後零時」や「ムムキ」「アディオス・ノニーノ」
といったおなじみの曲もあるが、まるで印象が異なる。
アストル・ピアソラ自身この編成に満足していたとは思われない。
それ故にこそ短期間にメンバーチェンジをしたし、
1990年頃にはこの編成自体を解散させてしまった。
もっとも同年他界してしまうのだが。
晩年の録音はピアソラブーム時に次々とプレスされていったが
マスタリングがあまり気に入らなかった。エフェクターを使用しリバーヴ
がかかったような音になっているのだ。この作品もその点では納得がいかない。
本作はアストル・ピアソラ最後の作品であり全盛期の演奏を聴かせるものではない。しかし、死期を悟った怒気迫る気迫のようなものを感じ取ることが出来る。
アストル・ピアソラを熟知した人にのみおすすめ出来る作品といえるだろう。
| 1.Imagenes 2.Milonga Para Tres 3.Buenos Aires Hora Cero 4.Pasajes Obscuras Dos Estrellas 5.Three Minutes With Reality |
6.Mumuki 7.Sexteto 8.Adios Nonino 9.Prelude To The Cyclical Night(Part 2) |

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晩年の録音はあまり持ってません。
多少、音源が悪くても昔の方が心に響く気がしたので…。
「アディオス・ノニーノ」は五本の指に入る好きな曲なので、この盤のを聴いてみたいですね。
ピアソラを凌ぐ?とも言われるチャマメのラウル・バルボーサさんもぜひ。
私も同じように思います。ベースのキチョ・ディアスやバイオリンのアントニオ・アグリがいた前期五重奏団の音がとても好きで、ついつい比較してしまいます。晩年の作品はピアソラブームに乗じてか多数出回りましたがやはり初期の録音の方が優れているように思います。ただ、死を意識したアストル・ピアソラの怒気迫る迫力を感じるという意味でこの作品も意味があるといえると思います。マニア向けだとはおもいますが。
ラウル・バルボーサ、聴いてみます。