World-Brasil-Bossa Nova : ★★★★★
本当の意味での自由な演奏とは
ジョアン・ジルベルト、1970年の録音。
ボサノバのムーブメントも終演の時を迎え、アメリカ進出したボサノバアーティストの
多くがそのままアメリカに居座ったり、ブラジルへ帰国したりしていた。そんな中、
ジョアン・ジルベルトは妻だったアストラッド・ジルベルトと別離を余儀なくされた。
その後もボサノバの歌姫としてアメリカで大成功を収めたアストラッド・ジルベルト
とは対照的に、ジョアン・ジルベルトはアメリカを離れ、メキシコで不遇な生活を送っていた。
そんな時期に残されたジョアン・ジルベルト珠玉の名作。それが本作である。
ドラスティックな人生の象徴ともいえるジョアン・ジルベルトだが、
この時期は心身共に相当まいっていたようだ。
しかし、概してこういった最も不遇をかこったかに見える時期に
最高の輝きを見せる場合がある。これに続く「三月の水」もそうだが、
ジョアン・ジルベルトのメキシコ時代の音源は本当に素晴らしい。
「三月の水」が本当にシンプルで最終曲のデュエットを除けば
ハイハットのみを加えたたった2人だけで演奏されているのに対し、
本作「彼女はカリオカ」ではオーケストラのバックがある。
しかし、基本的にジョアンの個性を前面に引き出した
シンプルな編曲という点で実は一貫している。
社会的拘束から解き放たれた、ある意味本当の意味での自由。
それを感じさせるジョアン・ジルベルトのメキシコ漂流時代。
荒廃した心からこんなにもみずみずしい音が生まれるのは
奇跡というより他はないだろう。
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