![]() Paixoes Diagonais |
World-Portugal-Fado : ★★★★★
ミージア、1999年リスボンはシャングリラスタジオで録音された5作目のアルバム。昨今ポストアマリアロドリゲスのファディスタとして活躍するアーティストが随分増えてきた。1974年のカーネーション革命以来続いたファド氷河期が終わり、ポルトガルのアルマ(心)として再びファドが多くの支持を集めるようになったのだ。 |
新しいファディスタ達は必ずしも伝統的な形式に捉われることなく、斬新で自由な切り口でファドを歌う。様々な音楽の長所を取り入れ、独自の音楽として飛躍しようとしているアーティストもいる。そこには長年続いたアマリア・ロドリゲスの"最高故の威圧感"にさいなまれる様子はない。アマリア・ロドリゲスの素晴らしさを認めた上での新時代のファドの姿があるのである。
ミージアもそんなファディスタの一人である。どちらかというと新時代のファディスタの中でも古典的なファドスタイルを踏襲するアーティストといわれているが、アマリア・ロドリゲスで完成、いや、完結されたとすらいわれるファドにミージアは新しい方向性を示した。
リスボン万博(1998年)のオープニングセレモニーでの熱唱、モントルージャズフェスティバルへの参加、パリのオランピア劇場でのコンサートが評判になる等、ミージア自身歌手として充実し世界的なファド歌手としての名声を確立してきた時期に発表された作品がこの5作目となる「Paixoes Diagonais(それぞれの情熱)」である。
ノーベル賞作家のジョゼ・サラマーゴやポルトガルの国民的詩人フェルナンド・ペソア、現代女流詩人ホーザ・ロバット・デ・ファリア、果てはブラジル作家であるカルロス・ドゥルモン・ヂ・アンドラーヂ等の詩が取り上げられており、上手くミージアの個性と融和した楽曲は、リリシズム溢れる作品として我々の元に届けられた。また、前作でも用いられたピアノの使用はマリア・ジョアン・ピリスやジョアン・パウロ・エステベスを迎えて今回も聴くことが出来る。この辺のアプローチはいわゆるミージアらしいファド世界の構築に一役かっているのだと思う。
「ノスタルジックなファド。しかし、悲しみやサウダーデを歌っても、悲観や諦めという解釈ではなく、そこから何かを生み出す再生としての悲しみを歌いたい。」そう語るミージアの言葉には、ファディスタ、ミージアのエレメントを集約したファドの豊穣な可能性をみた思いがした。
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