本作はエセル・レイムとマーティン・ケーニッヒによって1968年にフィールドレコーディングされた、ブルガリアン・ヴォイスの真髄に迫ることが出来る作品である。
ブルガリアは北はバルカン半島以北のスラブ〜ロシア文化、東はアジア〜イスラム文化、南と西はギリシア、イタリアのヨーロッパ〜ラテン文化に囲まれた文化の交流地である。時代の変遷と共に時の支配勢力によって文化圏がめまぐるしく変化したこともあり、様々な文化が複雑に交じり合って生まれたエキゾチックでな文化が存在している。
音楽に関してもその魅力的な文化を反映した奥深いものが作られており、ことブルガリアン・ヴォイスと呼ばれる女性合唱は古くから質の高い芸術として知られている。ブルガリアン・ヴォイスは独特のリズム、発声、メロディーを特徴としており一部楽器が入ることもあるが、基本的には女性コーラスによるア・カペラである。
リズムはバルトークをしてブルガリアンリズムと呼ばせた複雑な変拍子を有するもので、西アジアにルーツを持つといわれている。発声・メロディーに関しては奇声のような発声や不協和音、ビブラート・ノンビブラートを駆使したコクのある音で、民族的な泥臭さを有す半面、透き通るような透明感のある歌声が特徴的である。
1970年頃に活躍しだしたフィリップ・クーテフ(Philip Koutev)がブルガリア民謡に西洋音楽の手法を取り入れた音楽を展開し、これがブルガリアン・ヴォイスと呼ばれるようになったという。ブルガリア首都のソフィアの国立合唱団はトラキア地方を始めブルガリア各地の農村部に伝わる伝統文化を吸収し表現している。
耳では感知することが出来ないとされる20kHz周辺の高周波成分を多く含むブルガリアン・ヴォイスの歌唱。その音は音としては感知されないが、脳を刺激し安静を示す脳波であるα波を誘発するという。リアルでありながら神秘性を多分に含んだ歌声が、人の心に直接働きかける。誰にでも理解できる音ではないかもしらない。しかし、触れるだけでも良い。理解せずとも自然と体にしみこんでいく。そんな音である。
| 1.お母さん、お願い 2.若い羊飼い 3.黒い瞳の若者 4.私は山へ行きたい 5.秘密の約束 6.昨日、山を越えて |
7.愛するピリンの山々 8.この悲しい森で 9.白い絹よ、ゆれないで 10.わが子、ディミトロよ 11.ムラト王がラマに云うには |
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ブルガリアン・ヴォイスについて

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