小洒落た人の集まる気取った街は、11月にもなると、クリスマスの準備で忙しそうだ。
大掛かりで派手なイルミネーション、巨大なツリーや雪だるまにサンタクロース。
赤と緑と金色が、ライトアップされた光に照らされて目に飛び込んでくる。
冷たい風が吹く中、行き交う人達は、暖かそうなコートを身に纏い、談笑しながら歩いている。
生活の匂いのしない、この小綺麗な雰囲気が、現実を忘れさせ刹那の安堵を与えるのだろう。
ここはテーマパーク。行き交う人の街。住人には外来者をもてなす義務があるのだろう。
大通りから裏路地に入り、地下へ降りると、現実に引き戻された思いがした。
ステージではいつものメンバーがリハーサルをしていた。
リハーサルは、公演中には見せないピリッとした空気を感じる。
この打ち合わせがあって、力を抜いた演奏が出来るのだろうか。
ボーイの注文を受けながら、そんな事を考えてみる。
まもなく、ステージが始まった。
ブラジル好きには所縁の街、場末のさびれたペンシルビル。
客引きに誘われて登る先には、悲喜こもごもの葛藤が渦巻いている。
媚態から諦めに至る客、心を潰し手練手管に注ぐホステス。全てを管理する経営者。
様々な登場人物がそれぞれの思いを秘め、絶望の瀬戸際で生き続ける。
虚飾に覆われた現代社会において、内面を露わにする。
内省的に生きてきたであろう一人の人格が裸となる。
どんなに奢侈な服を纏っていても、裸にされたら惨めなものだ。
ましてや、肉体のみならず、精神を裸に出来るだろうか。
いつも、やりきれない思いになる。
それでも、足を向けずにはおられない。
そこにはひたむきに真実と向き合った痕跡が認められるから。
平成リアリズムの傑作。