「恐山 銅之剣舞(どうのけんばい)」は、芸能山城組が1976年1月20日にビクター・レコード第一スタジオにて録音したファースト・アルバム。それぞれ組曲形式の「恐山」と「銅之剣舞」の二曲が収められている。「恐山」はロック形式のツインギタークインテットと芸能山城組がぶつかり合う攻防を、「銅之剣舞」は読経や義太夫を取り入れたコーラスからケチャへと至る芸能山城組のコーラスを満喫できる曲となっている。
プロデューサーの中村とうよう氏の解説には、「音楽は人の心を鎮静させるものではなく、心を乱し狂わせるものだ。説明や分析、説得に関しては文字に劣るが、せいぜい10分から20分で聴く者を訳の分からぬ興奮状態へ誘い込む力を持っている。アルバム作成に当たり、この音楽の力を発揮させ、聴く人の心に強い衝撃を与えるような作品にしたかった。」と書いてある。
即興性の高い芸能山城組の音楽には楽譜といえるような楽譜が無い。そこには、無音声または声高不確定などと書いてあり、練習の積み重ねの中で出来た音楽をベースに即興を大胆に取り入れていくのだという。東京教育大学(現筑波大学)とお茶の水女子大学を中心とした混声合唱団だった「ハトの会コーラス」が、如何にして芸能山城組へと変貌を遂げたのか。1966年に山城祥二が指揮者になって以来何が起こったのか。
「恐山」は、渡辺宙明の曲だが、山城祥二、井上尭之、大野克夫の編曲によって大胆にその様相を変える。また、その井上尭之、大野克夫らのバンド参加は音の幅を広げ、内省的で深遠な世界観の構築に役立っている。イタコ役に当たる女声ソロの神礼子は正にはまり役で、死者の霊が乗り移っていくイタコを目の当たりにしているかのようだ。まるでインド古典のようにテンポアップして盛り上がっていくが、最後に静かなひんやりとした音へと移行する。これれこそが彼岸なのだろうか。
「銅之剣舞」は、オリジナル曲である。ケチャをベースにして入るが、読経に始まり、義太夫、神事芸能、歌舞伎の台詞回し等を取り入れたオリジナルの日本民話劇だという。ケチャであるので男声コーラスだが、語り手の女声とケチャが交錯して独特の音世界を構築する。
01 | 恐山 | 渡辺宙明; 山城祥二; 井上堯之; 大野克夫 |
02 | 銅之剣舞(どうのけんばい) | 山城祥二; 山城祥二; 芸能山城組 |
井上堯之:Guitar
速水清司:Guitar
佐々木隆典:Bass
鈴木二郎:Drum
大野克夫:Keyboad
芸能山城組
- 1976
- ビクター音楽産業株式会社
- SF-10056